退職代行サービスの利用料金は通常3万円から5万円程度で、場合によっては10万円以上かかることもあります。実際、このサービスは10年以上前から存在していましたが、近年SNSやインターネットの普及により、急速に注目を集めています。
私たち人事部門の経験から見ると、退職代行サービスを利用する方の多くは、心身の不調や職場での人間関係に悩みを抱えているケースが目立ちます。さらに、このサービスの成功率は民法627条に基づいて100%となっています。また、会社との直接的なやり取りを避けられることで、心理的な負担を大きく軽減できる一方で、予期せぬリスクも存在します。
この記事では、退職代行サービスの安全性について、実際のメリット・デメリットを詳しく解説していきます。
元人事が見た退職代行の現場
退職代行サービスを利用する方が増えている近年、私が人事部門として実際に見てきた現場の実態をお伝えします。意外にも、多くの企業は退職代行からの連絡に対して予想以上に冷静な対応をしています。
東京商工リサーチの調査によると、大企業の18.4%が退職代行業者からの退職手続き要請を経験しているとのデータがあります。また、約4社に1社が退職代行による退職を経験している状況です。このように、企業での利用実態は年々増加傾向にあります。
経験から言えることは、退職代行からの連絡を受けた後、多くの会社は感情的な反応を示すことは稀で、粛々と手続きを進めます。ある不動産会社の人事担当者は「2年前に初めて退職代行業者から電話を受けたときは驚いたが、数年前には考えられなかったことが今は日常になりつつある」と冷静に受け止めています。
退職代行の利用者層は、一般的に思われているよりも幅広いです。「退職代行jobs」の調査では、利用者の年代は20代が65%、30代が21%、40代が7%、50代も3%となっています。また、最高齢は71歳だったという報告もあり、若手だけの問題ではないことがわかります。
人事部門は、退職代行サービスの利用を職場環境や組織文化の改善のシグナルとして捉えることも少なくありません。実際、Beatrustの調査では「退職代行が必要ない職場環境が理想だ」という意見が最も多く、企業側の対応や職場環境に課題があることを示唆しています。
世代間での価値観の違いも顕著で、20代では「職場とのトラブルを避けられるのが良い」という意見が支持される一方、50代では「最後まで自分で責任を持つべき」という意見が強いです。
私たち人事担当者は、退職代行を利用する背景には様々な理由があることを理解しています。上司のハラスメントや職場環境の不適合、人間関係の希薄さなどが主な要因です。このような状況を改善するためには、企業側が職場環境を見直し、退職しやすい心理的安全性の高い環境を整えることが求められています。
退職代行サービスのメリットと現実
退職代行サービスを利用する最大のメリットは、退職の心理的ハードルを大幅に下げられることです。多くの利用者は「上司と直接話すのが怖い」「退職の意思を伝えるのが精神的に負担」という理由で利用しています。実際、退職代行を選ぶ主な理由として「上司の顔を見たくない」「辞めると伝えることができない」というケースが多く報告されています。
また、退職代行サービスには以下のようなメリットがあります:
- パワハラ対策ができる(上司からの圧力や嫌がらせを防止)
- 有給休暇消化や退職金の交渉がスムーズになる可能性がある
- 急な退職でも即日対応してくれる
- 退職届などの必要書類を正しく作成してくれる
- 24時間相談に対応している業者が多い
実際の利用状況を見ると、月に約1,000〜1,500人がサービスに相談し、そのうち約半数が実際に退職代行を利用しています。退職代行サービスの利用者の年代別割合は、20代が65%、30代が21%、40代が7%、50代が3%となっており、最高齢は71歳という報告もあります。
サービス利用後の実態については、約73.8%が正社員として転職し、8.7%が派遣社員、5.1%が契約社員として働いています。また、約4割の方が転職後に年収アップを実現しており、約9割が退職代行サービスの利用に満足していると報告されています。
退職代行サービスは大きく分けて「民間企業」「労働組合」「弁護士(法律事務所)」の3種類があり、残業代や給与の未払い、有給休暇の取得、退職日の調整など、会社との交渉に対応できるのは「労働組合」と「弁護士」のみです。民間企業が運営する退職代行サービスは1万〜5万円、労働組合は2万5000円〜3万円、弁護士は5万〜10万円が費用相場となっています。
そして、退職代行サービスの根拠となるのは民法627条で、「どのような企業でも解約申し入れの日から2週間で退職できる」という法的保証があります。
なお、退職代行を利用しても、約半数以上の方が新しい職場に問題なく適応できていることも重要なポイントです。
退職代行のデメリットと見落としがちな落とし穴
退職代行サービスには便利な面がある一方で、見過ごしがちなデメリットや落とし穴も存在します。私が人事として見てきた事例をもとに、退職前に知っておくべき重要な注意点をお伝えします。
まず最も基本的なデメリットは費用面です。退職代行の相場は3万円~5万円で、サービスによっては5万円以上かかることもあります。自分で退職する場合と比較すると、決して安くない出費となります。
また会社との関係性が完全に断たれることも大きな落とし穴です。退職代行を利用すると、前職からの評判が下がり、転職活動に影響する可能性も否定できません。厚生労働省の「令和6年上半期雇用動向調査結果」によると、転職後に賃金が上がった人の割合は約4割、変わらなかった人が約3割、減少した人が約3割となっています。また、残業時間については「長くなった」が25.4%、「変わらない」が54.9%、「短くなった」が19.7%という結果が出ています。つまり、退職代行の利用が必ずしも条件改善につながるわけではないのです。
さらに見落としがちな問題点として、民間企業が運営する退職代行サービスには交渉権がないため、有給消化や未払い給与に関する交渉ができないことがあります。これにより、本来受け取れるはずの権利が行使できなくなるリスクがあります。
退職代行使用後に会社から直接連絡が来るケースもあります。業者を通じて「連絡しないでほしい」と伝えていても、会社側が本人確認のために連絡してくることは珍しくありません。
また、以下のような特定の状況では法的リスクも考慮する必要があります:
- 契約社員や派遣社員が期間満了前に一方的に退職する場合
- 引き継ぎなしで退職し、企業に大きな損害が出た場合
退職代行業者選びも重要な要素です。料金だけを基準にすると、悪質な業者に騙される恐れもあります。信頼できる業者を選ぶためには、実績の豊富さやアフターサービスの充実度を必ず確認しましょう。